カパプはイスラエルで開発された対テロ用の近接戦闘術(CQB)です。
カパプ(KAPAP)の名称は、ヘブライ語で「接近戦闘」を意味する「Krav Panim el Panim(クラヴ・パニム・エル・パニム)」の頭字語。
英語では「フェイス・トゥ・フェイス・コンバット」と訳されます。
現在カパプは、イスラエル国防軍や特殊警備隊、国際警察、特殊工作部隊、対テロ部隊などで用いられています。
1948年のイスラエル独立戦争の際にも、カパプはイスラエル軍事組織ハガナーのパルマッハ部隊により用いられ、実戦で絶大な効果を発揮。
イスラエル国防軍創設後、カパプは同軍の特殊部隊メンバーにのみ訓練される戦闘術になりました。
そして現役隊員や指導教官、各部隊OBたちの手よってカパプは進化して行きます。
現代のカパプは、イスラエル国防軍エリート特殊部隊『サエレットマトカル』などの部隊に所属し、対ゲリラ戦や素手の戦闘術を習得したハイム・ペレール中佐に代表されます。
現代KAPAPシステムの創始者でありイスラエル国際カパプ連盟創業者である彼は、カパプ宗家として国際的に認識されている人物。
また国際カパプ連盟共同創業者で、現在は米国アヴィ・ナルディアアカデミー代表のアヴィ・ナルディア少佐は、世界の軍隊・警察・特殊部隊にカパプを教えています。
カパプの歴史
1918年の第一次世界大戦終結後、シオニズム運動によりユダヤ人がパレスチナ入植をはじます。
その当時、彼らを攻撃するアラブ人から身を守るために、考案された護身術がカパプの起源と言えます。
当時はまだ、素手や農具を使った初歩的な戦闘法でした。
その後激化するユダヤ移民への攻撃に対抗するため、1920年に『ショメール』など既存のユダヤ人自警団組織を解散して、統括的軍事組織『ハガナー』が編成されます。
この軍事組織ハガナーは、強力かつ効果的な戦闘法の開発に力を注ぎます。
素手・スティック・ナイフ・銃を含むCQB
そして1930年代後半のアーリイャ(ユダヤ人のパレスチナ移住の意味)の頃、ハガナーはボクシング・柔術・レスリングなど世界中の武術格闘技の実戦的な技術と要素だけを抜粋し導入。
そして画期的な近接戦闘術を確立します。
その近接戦闘術のことを、ハガナーメンバーは『カパプ(KAPAP)』と名付けます。
カパプには銃火器、ナイフファイティング、スティックファイティング(棒術)も含まれていました。
フランスの杖を使った護身術、『カンヌデコンバット』もすでにカパプアイテムの一部になっていました。
それは、当時『ナブット』と呼ばれる1メートルの長い棒を装備していた、アラブ人の脅威に備えるために採用されたからです。
そのため当時、カパプの訓練でもっとも重視されたのはスティックファイトでした。
中でも短棒のスティックファイトは非常に実戦的で、若い新兵の間では一番人気があったと言います。
短棒は、外出時に袖の中に隠して携帯できることも魅力でした。
その後カパプは、ハガナーの戦闘システムの概念となります。
ハガナーに設置された特殊部隊
1941年、そのハガナー最高司令部によって設立された『パルマッハ部隊』では、兵士のための戦闘開発プログラムとしてカパプを採用します。
それはカパプが体力・精神力を強化する上で、非常に有効な戦闘スキルセットだったからです。
その効果は、1948年のイスラエル独立戦争において、パルマッハ部隊によっていかんなく発揮。
この戦争の最中にハガナーはイスラエル国防軍となり、パルマッハは同軍の特殊部隊となりました。
以後カパプは、イスラエル国防軍特殊部隊の隊員にのみに訓練される、近接戦闘術(CQB)としてとしてグレードアップされて行きました。
ハガナー・パルマッハにおける主なカパプの貢献者
イツハク・シャーデー
パルマッハ司令官。同部隊にカパプを採用した。
ガーション・コプラー
柔道と柔術の有能なインストラクター。
パルマッハとハガナーにおいてカパプトレーニングの一環として、セルフディフェンス(護身術)コンセプトを確立した。
イェフダ・マーカス
パルマッハの肉体訓練と柔術のチーフインストラクター。
彼の死後ガーション・コプラーが後任に就いた。
モシェ・フィンケル
パルマッハのフィットネストレーニングオフィサー。
メイシェル・ホロヴィッツ
パルマッハのオフィシャルカパプインストラクター。
パルマッハでスティックファイト戦術の開発を担当した。
メナシー・ハレル
スティック戦闘システムの開発に貢献し、スリング戦闘の唯一のインストラクターだった。
メイア・ラビノヴィッツ
ナイフファイティングの専門家。
現在のカパプシステム
「カパプ」の名称は、1950年頃から2000年までの長い間、ほとんど使われることはありませんでした。
それは軍が、イスラエル武術全体の呼称を「クラヴマガ」に統一することに決めたからです。
この間「カパプ」という名称は、ユニット216、サエレットマトカル(シャロン元首相も所属)など軍特殊部隊内で密かに使われるだけで、公に使われることはありませんでした。
あとは、ハガナーとパルマッハの歴史説明の中にその名が登場する程度。
つまり約50年間、カパプは公的にはクラヴマガと呼ばれていたことになります。
2000年末、ハイム・ぺレール中佐とアヴィ・ナルディア少佐が率いるCQBグループは、「クラヴマガ」の呼称を止めて公にも「カパプ」と呼ぶことを決めました。
そして「クラヴマガとは異なるカパプの戦闘原理を一般に普及させる」。
このことを目的として『イスラエル国際カパプ連盟』を設立します。
宗家ハイム・ペレール中佐は、イスラエル国防軍特殊部隊サエレットマトカルのメンバーです。
アヴィ・ナルディア少佐は、レバノン戦争従軍の経験を持ち、退役後はイスラエル警察エリート特殊部隊『ヤマム』の諜報部員として活躍。
またヤマムやサエレットマトカルなど、軍・警察・特殊部隊のカパプオフィシャルインストラクターも務めました。
2001年、アヴィ・ナルディア少佐は米国へ移住し、独自の『カパプコンバッティブズシステム』の開発を始めました。
2014年アヴィ少佐は『イスラエル国際カパプ連盟』を離れ、自らの団体アヴィ・ナルディアアカデミー代表として活動。
イスラエル国際カパプ連盟は宗家ハイム・ペレール中佐・アミット・ヒメルシュタイン先生らによって活動しています。
日本においては2006~2011年までイスラエル人インストラクター(本国へ帰国)。
2013年からカパプ防衛館岩土代表が自ら創始した『カパプ防衛術(対テロ防衛技術)』と併せて、カパプ/KAPAPの技を指導しています。
護身術カパプ防衛館では練習生を募集中です。
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東京の護身術教室 カパプ防衛館
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